脳内の神経細胞はたくさんの手を伸ばしてつながりあい、複雑なネットワークを作っています。この“つながり部分”は“シナプス”と呼ばれており、私たちが考えたり覚えたりするときにとても重要な働きをしています。おもしろいことに、シナプスは筋肉とおなじアクチンと呼ばれるタンパク質からできています。シナプスは筋肉と同じように素早く動くことができるのです。私たちの研究室では、脳の発達過程や学習によってシナプスがどのように形や動きが変化していくのかを研究しています。特に私たちが発見した「ドレブリンA」という脳に特有なタンパク質に注目しています。ドレブリンAはシナプスのアクチンをコントロールするタンパク質です。ドレブリンAは脳の発達とともに現れますが、年をとるにつれて減っていきます。特にアルツハイマー病など記憶力が落ちてしまっている脳では、ほとんどなくなってしまいます。また、神経細胞でドレブリンの量を実験的に増やしたり減らしたりすると、それに応じてシナプスのかたちや数が変化します。私たちはこのタンパク質のはたらきを探ることによって、脳の成り立ちや、仕組みを明らかにしようとしています。