Anhedonia requires MC4R-mediated synaptic adaptations in nucleus accumbens Byung Kook Lim, Kee Wui Huang, Brad A. Grueter, Patrick E. Rothwell & Robert C. Malenka
Nature
 487,183?189, 2012 (12 July 2012)
http://www.nature.com/nature/journal/v487/n7406/pdf/nature11160.pdf

強いストレスはうつの原因の一つであり、感情障害のほか摂食不良や不快楽症(anhedonia)を惹起する。著者らは特に摂食不良に着目し、これを慢性ストレスによる”摂食による快楽”といった”報酬”を得ようとする”動機”の減少であると仮定し、この症状に関与する神経回路と分子メカニズムの両方を解明することにした。基本的に動物の動機を形成するのはドーパミン神経のターゲットである「側坐核」であり、また摂食中枢の一つである視床下部「弓状核」のα-melanocyte stimulating hormone (α-MSH)含有細胞がストレスによって活性化することから、慢性ストレス負荷による側坐核におけるα-MSHの関与を調べたところ、

?α-MSHは、側坐核dopamin receptor 1 (D1)陽性細胞にのみ、AMPAR EPSCが減少し、GluR2欠損型AMPARの割合が増加する。

?慢性ストレスは体重減少を起こすとともに、α-MSHと同じように側坐核D1細胞にのみAMPAR EPSCの減少を起こす。側坐核にある、α-MSHの受容体であるmelanocortin receptor 4 (MC4R)をAAV-shRNAでノックダウンすると、体重減少が無くなり、AMPA受容体減少もなくなる。

?シナプス部位AMPA受容体減少は、NMDA受容体依存性LTDと同じメカニズムで生じる。

?慢性ストレス負荷時に、スクロース嗜好テストやコカイン条件付け位置嗜好性テストにおいて不快楽症の指標が増加するが、側坐核においてMC4Rノックダウン、あるいはLTDを抑制することによって、ストレスによる不快楽症が改善する。

以上の結果からストレスは、側坐核D1陽性神経細胞において、MC4Rを介したシナプス部GluR2-AMPAR減少をおこした結果、食の不快楽症をもたらすことが明らかになった。