Amar Sahay, Kimberly N. Scobie, Alexis S. Hill, Colin M. O’Carroll, Mazen A. Kheirbek, Nesha S. Burghardt, Andre´ A. Fenton, Alex Dranovsky & Rene´ Hen. "Increasing adult hippocampal neurogenesis issufficient to improve pattern separation" Nature 472,466?470 (28 April 2011)

海馬歯状回では成熟動物においても、神経幹細胞が神経前駆細胞になり、さらに幼若な新生神経細胞と分化して、海馬神経回路で機能すると考えられている。新生神経細胞は、歯状回全体の約10%程度を占め、さらに学習、良い環境、運動、抗うつ剤の投与等によって増加する。新生神経細胞は、(似通った物体・環境の弁別といった)特定の認知機能に重要で、かつ、抗うつ剤の作用点と考えられているが、新生神経細胞の増加が認知機能やうつ状態の改善に十分条件かは明らかでない。そこで筆者らは、新生神経細胞のプログラム死を抑制することによって歯状回新生細胞を増加させたマウスで、認知機能やうつの指標に改善が見られるかを検討した。

このマウスにおいては、

?通常の物体認識、空間学習、文脈依存的恐怖学習、学習の消去は正常

?ただし、似通った環境(部屋)の弁別が、通常マウスに比べて優れている

?新生細胞増加マウスに運動させると、新生細胞がさらに増えて探索行動がふえる。

?新生細胞が増加しただけでは、うつ状態を示す指標に変化はない、

ことがわかった。

以上のことから、新生神経細胞を増加させるような治療(薬??)は、老化に伴う認知機能低下の改善には有効であると考えられる。