Reversal of hippocampal neuronal maturation by serotonergic antidepressants

Kobayashi K, Ikeda Y, Sakai A, Yamasaki N, Haneda E, Miyakawa T, Suzuki H.

Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 May 4;107(18):8434-9. Epub 2010 Apr 19.

 近年抗うつ剤が海馬歯状回神経幹細胞・新生神経細胞に作用して抗うつ作用を発揮することが示唆されており、筆者らは抗うつ剤である選択的セロトニン再取込阻害薬(SSRI)フルオキセチンの、歯状回顆粒細胞に対する効果を検討した。

生後9週令・雄C57BL/6Jマウスに、高用量 (22mg/kg/day)フルオキセチンを4-5週 経口投与したところ、コントロールマウスに比べて、

1) calbindin (mature cellマーカー)↓、calretinin (immature マーカー)↑、BrdU陽性細胞数→

2) ストレスによるcFos発現↓

3) immature 顆粒細胞で見られる、TTX非感受性、Ni2+感受性spikeが見られる。

4) 顆粒細胞の出力である、歯状回→CA3 mossy fiberシナプス伝達facilitation↓

5) 5-HT4受容体依存性のmossy fiberシナプスpotentiation↑

と、フルオキセチン慢性投与によって、顆粒細胞の”未熟化(dematuration)”が生じた。

また、5-HT4受容体ノックアウトマウスでは、フルオキセチン慢性投与による、calbindin↓、mossy fiberシナプス伝達facilitation↓が消失することから、フルオキセチンは5-HT4受容体を介して顆粒細胞未熟化をおこしていることがわかった。

以上の結果は、抗うつ剤が歯状回顆粒細胞の成熟を促すことによって抗うつ作用を示すという仮説の信憑性に一石を投じるものであり、抗うつ作用における顆粒細胞の動態を再検討する必要がある。