Cell (2012), 151 , 709-723

“Pathogenic SYNGAP1 Mutations Impair Cognitive Development by Disrupting Maturation of Dendritic Spine Synapses”

James P. Clement, Massimiliano Aceti, Thomas K. Creson, Emin D. Ozkan, Yulin Shi, 3 Nicholas J. Reish, Antoine G. Almonte, Brooke H. Miller, Brian J. Wiltgen, Courtney A. Miller, Xiangmin Xu, and Gavin Rumbaugh

要旨

近年の大規模スクリーニングによって、ASD患者らにはNLG、Shankに代表されるようにシナプスタンパク質をコードしている遺伝子に変異が見られることが多い事が分かってきた。しかしながら、なぜこれらのタンパク質の異常が知能障害やASDを引き起こすのかは分かっていない。1つのモデルとして、シナプスの興奮、抑制のバランスがおかしくなって障害を引き起こすE/Iバランス仮説があり、オプトジェネシスを用いた実験によりE/Iバランスを崩すと認知、社会行動に異常が出ることが示されてきた。本研究では、知能障害/ASDモデルマウスであるSynGAP1-KOマウスを用いて、シナプスタンパク質の異常がどのように固体の異常を引き起こすのかを解析した。SynGAP1は発達段階において、PND14ころに最大の発現を示して、SynGAP1-KOマウスを用いた実験ではこの時期に電気生理学的実験において異常を示した。スパインにおいては、PND14あたりでmotility、形態に異常がおこり、形態においてはその後もその異常(ヘッド幅の増大)が続いた。これらのスパインの異常は海馬の回路レベルでも異常をきたしており、過興奮の状態にあった。また行動解析においても異常がみられ、この発達期におきた異常は大人になってから遺伝子レスキューしても回復しなかった。これらの事から、SynGAPは発達期において神経の興奮をおさえる役割をしており、この時期の正常なシナプスの発達がその後の知能発達に多大な影響を与えることが分かった。