The Journal of Neuroscience (2013), 33, 11715-11723."Enriched Early Life Experiences Reduce Adult Anxiety-Like Behavior in Rats: A Role for Insulin-Like Growth Factor 1"

早期の人生経験は脳の発達に影響して、それによりストレスへの脆弱性や不安様行動における個体差が形成されると考えられる。げっ歯類では、高レベルの母性的養育は出生仔の行動やストレス反応に対して持続性のポジティブな効果を持っている。つまり、豊かな環境(EE)での離乳後の育成やマッサージは出生前ストレスや母子分離によるネガティブな影響を相殺できる。著者らは近年、インシュリン様成長因子(IGF-1)が脳の発達過程における豊かな環境やマッサージの影響を知るための鍵となる調節因子であることを見出した。早期の豊かな経験が不安様行動に持続的な影響をもたらすかどうかということと、IGF-1がこれらの影響に関係しているかどうかに関しては明らかにはなっていない。著者らは不安様行動の査定を、対照群の成体ラットと早期EEまたはマッサージを施した成体ラットに高架式十字迷路を用いて評価した。そして、著者らはEEとマッサージの両方で不安様行動が減少することを見出した。通常飼育の仔ラットへの早期のIGF-1全身性投与では、成体になってからの不安様行動の減少が見られ、EEとマッサージの効果を模倣する。また、早期にIGF-1の作用をブロックすると、マッサージとEEの効果が阻害された。EEとIGF-1投与をそれぞれ行った個体で、生後12日と60日における海馬でのグルココルチコイド受容体の発現を評価した。その結果、どちらの個体群でも生後60日で有意に高いグルココルチコイド受容体の発現が見られた。これらの結果は、IGF-1が成体になってからのストレスに対する脆弱性や回復力において、早期の人生経験による持続性の効果の調節に関係していることを示唆している。