K. W. Miyazaki, K. Miyazaki, K. Doya,                          Activation of Dorsal Raphe Serotonin Neurons Is Necessary for Waiting for Delayed Rewards, The Journal of Neuroscience (2012) 32(31): 10451-10457

前脳のセロトニン系は衝動的行為の制御に関して重大な役割を持っている。ラットが遅延報酬の待機行動を行なっている際、中脳の背側縫線核において活動が高まっているとの報告がある。しかしながら、セロトニン神経系の活動と遅延報酬に対する忍耐力の間の因果関係においては不明瞭な部分が残されていた。著者らは、5-HT1A受容体のアゴニストである8-hydroxy-2-(di-n-propylamino) tetralin(8-OH-DPAT)を背側縫線核に局所投与することでセロトニン神経の活動を抑制し、それによってラットの遅延報酬に対する忍耐力が障害されるかどうか調べた。オープンフィールドに設置されたエサ場と水場を交互に訪れて鼻先を窓に入れることで遅れて報酬を獲得できる課題を行ったところ、2秒間の遅延で報酬が得られる条件では、セロトニン神経活動の抑制は鼻先の差し込む方の選択ミスの数や報酬の遅延報酬の待機の失敗の数への影響は見られなかった。一方で、7-11秒の遅延で報酬が得られる条件では、待機の失敗数において有意な増加が見られ、差し込む方の選択ミスには差は見られなかった。これらの結果により、背側縫線核の活動が長期の遅延報酬に対する忍耐に必要であり、来たる報酬の見通しがあるときにはセロトニン神経活動の上昇により忍耐力が増強されるということが示唆された。