Matthew N. Hill et al.Recruitment of Prefrontal Cortical Endocannabinoid Signaling by Glucocorticoids Contributes to Termination of the Stress Response The Journal of Neuroscience, 20 July 2011, 31(29): 10506-10515

ストレスにより誘発されたHPAアクシスの活性化を停止させるための内側前頭前皮質内でのグルココルチコイドのシグナルを促進させるメカニズムはあまり明らかではない。

著者らは、内側前頭前皮質の局所的なカンナビノイドCB1受容体の拮抗作用によりラットでストレス後のグルココルチコイド分泌の停止が遅延したということを報告した。CB1受容体を欠損したマウスでもストレスに対して同様の反応が見られた。ラットでは、グルココルチコイド受容体のアンタゴニストであるRU-486の前処理によって性質を変化させた前頭前皮質内で、ストレス負荷後に内在性カンナビノイドである2-アラキドノイルグリセロールの上昇が見られた。電子顕微鏡と電気生理学的データにより、内側前頭前皮質の前辺縁皮質の第?層にある主要なニューロンに影響を与える抑制性の神経終末にCB1受容体があることが証明された。前頭前皮質のスライスカルチャーにコルチコステロンを投与すると前辺縁皮質の第?層の主ニューロンでGABAの放出を引き起こし、それは1時間後にCB1受容体のアンタゴニストの投与することで停止した。

これらのデータは内側前頭前皮質でのHPA軸の活性化を終了させるためのストレス誘発性グルココルチコイドシグナルは内在性カンナビノイドのシグナルの局所的な補充によって調節されているということを示していると考えられる。CB1受容体の内在性カンナビノイドの活性化は内側前頭前皮質でのGABAの放出を減少させ、恐らくはストレス反応を停止させる働きを持つ前辺縁皮質の主ニューロンの出力を増加させる。これらのデータは、内在性カンナビノイドのシグナルがコルチコステロン分泌を阻害する皮質辺縁性の連結した活動とグルココルチコイド受容体との関与を結びつけているという考え方を支持するものである。