Snyder JS, Soumier A, Brewer M, Pickel J, Cameron HA (2011) Adult hippocampal neurogenesis buffers stress responses and depressive behaviour. Nature 476, 458-461.

Supplementary

グルココルチコイドはストレス性の体験に応じて放出され、恒常性の機能保持に多くの役割を持っている。しかしながら、認知機能障害とうつ病性障害にはグルココルチコイドの調節機能不全が伴って起きることが知られている。海馬はストレス性のホルモンの受容体が多く集まっている部位であり、ストレスとグルココルチコイドは成体神経新生を強く抑制している。神経新生の減少は不安症やうつ病の発症原因と関わっていると考えられてきたが、直接の関わりを示す証拠は無かった。著者らは、ストレス反応に関わる内分泌と行動の正常な発現には、海馬での成体新生神経細胞が必要であることを示した。トランスジェニックもしくは放射線照射処理によって成体での神経新生を特異的に阻害したマウスでは、対照群のマウスに比べて、ストレス負荷後のグルココルチコイド血中濃度の回復が遅れ、デキサメタゾン投与によるグルココルチコイド分泌抑制の効果も低下した。このことから、視床下部―下垂体―副腎(HPA)軸の制御に海馬での成体神経新生が働いているということが示された。行動実験においても、対照群と比較して、成体神経新生を阻害したマウスでは急性ストレス負荷後の新規環境で食物回避が多く、強制水泳で無動時間が長かった。また、快感消失の測定尺度であるスクロース選好性も低下した。これらの結果は海馬におけるHPA軸のネガティブコントロールに、歯状回の新生ニューロンが関わっているということを確定させ、うつ病における成体神経新生の直接的な関係を示すものである。