Nature 493, 411-5, 2013 “Exaggerated translation causes synaptic and behavioral aberrations associated with autism.”

Emanuela Santini, Thu N. Huynh, Andrew F. MacAskill, Adam G. Carter, Philippe Pierre, Davide Ruggero, Hanoch Kaphzan & Eric Klann

添付ファイル 1

添付ファイル 2

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、早期発症型の遺伝性の神経精神障害のグループであり、社会的相互作用スキルの欠如、コミュニケーション能力の障害、儀式様反復行動などといった症状を伴う。1つの仮説として、ASDの原因となる共通の分子機構は、翻訳制御が変化し、その結果過剰なタンパク質合成が起こることだと考えられている。自閉症患者では、 EIF4E 遺伝子座を含む染色体4qに遺伝的変異を持つ例が報告されている。また、EIF4E 遺伝子のプロモーター活性の上昇と関連する稀に起きる一塩基多型が、自閉症患者で見つかっている。今回我々は、マウスで遺伝子操作によりeIF4E(真核生物翻訳開始因子4E)の発現レベルを上昇させた。その結果、キャップ依存性の翻訳が過剰に行われ、反復固執行動や社会的相互作用の減少などの自閉症に似た異常行動が観察された。さらに、これらの自閉症様行動には内側前頭前皮質、線条体、海馬のシナプスの病態生理学的変化が伴っている。eIF4Eトランスジェニックマウスに見られるこのような自閉症様行動は、キャップ依存性翻訳の阻害剤である4EGI-1の脳室内注入によって正常化する。これらの知見は、過剰なキャップ依存性翻訳、シナプスの機能不全、自閉症に伴う異常行動の間の因果関係を実証している。