Journal of Neurochemistry (2011) 116, 291-303 Density and function of central serotonin (5-HT) transporters, 5-HT1A and 5-HT2A receptors, and effects of their targeting on BTBR T+tf/J mouse social behavior Georgianna G. Gould et al.,

BTBRマウスは自閉症モデルマウスとして知られており、自閉症に特有な社会的相互行為の機能障害と限定した反復行為などの行動を示す。これらの行動は神経伝達物質であるセロトニンが基底にあると考えられている。本研究ではオートラジオグラフィーという技術を用いて、BTBRマウスとC57マウスでのセロトニントランスポーター(SERT)と5-HT1A受容体、5-HT2A受容体の密度を比較している。その結果、BTBRマウスの脳において[3H]cyanoimipramine結合したSERTは20-30%減少していたことが分かった。BTBマウスとC57BL/6Jマウスの海馬をホモジェネートして、[3H]citalopram結合したSERTのmaximal binding(Bmax)がBTBRマウスで有意に下がり、解離定数(KD)も減少した。また5-HT1A受容体、5-HT2A受容体の密度は変化しなかったが、8-OH-DPAT刺激した[35S]GTPγS結合がBTBRマウスの海馬CA1領域において28%も高いことが分かった。さらにSERTブロッカーのフルオキセチンと5-HT 1A受容体のアゴニストであるブスピロンはBTBRマウスの社会的相互行為を増強させた。D2/5-HT2受容体のアンタゴニストであるリスペリドンはmarble buryingテストにおいてmarbleを埋めた数が有意に増加したが、社会的相互行為の改善は出来なかった。以上のことから、BTBRマウスにおいて社会的相互行為の低減は海馬でのSERTまたは5-HT1Aの機能変化によるものと示唆された。