Molecular Brain 2013, 6-9 “Role of metabotropic glutamate receptor 5 signaling and homer in oxygen glucose deprivation-mediated astrocyte apoptosis”

Maryse Paquet, Fabiola M Ribeiro, Jennifer Guadagno, Jessica L Esseltine, Stephen SG Ferguson and Sean P Cregan

mGluRはシナプスの活性を調整する神経伝達物質受容体として機能する。アストロサイトでのmGluR5の発現は、急性および慢性の神経変性状況で増加されることが分かっているが、損傷後のアストロサイトでのmGluR5発現増加時の機能についてはあまり知られていない。著者らはOGD(Oxygen glucose deprivation)への反応によって初代マウス皮質のアストロサイト細胞の細胞死を調査し、OGDがアストロサイトのネクローシス細胞死やアポトーシス細胞死を誘発していることが分かった。また、mGluR5( group1 )はGαq/11を介してホスホリパーゼC(PLC)の活性に主に結合することが分かっている。そこで、PLCの加水分解物質であるイノシトールリン酸での変化を観察した。OGDはアストロサイトmGluR5タンパク質の発現量を増加させ、イノシトールリン酸とリン酸化キナーゼ(ERK1/2)の増加をもたらした。しかし、イノシトールリン酸だけはmGluR5選択的アンタゴニストMPEPによって妨害された。mGluR5ノックアウト・マウスに由来する皮質アストロサイトはOGDによるアポトーシス細胞死への耐性を示したが、mGluR5が発現しないことによりネクローシス細胞死に対する回復が見られなかった。イノシトール1,4,5三リン酸塩受容体の拮抗薬も同様に、ワイルドタイプアストロサイトでのアポトーシス細胞死を減少させた。しかし、mGluR5のないマウス由来アストロサイトへの回復はみられなかった。さらに、mGluR5に対するHomerタンパク質相互作用の障害も、アストロサイトアポトーシス細胞死を減少させた。これらの観察から、mGluR5の上方調節は、ホスパリーゼCを介した選択的なアストロサイトのアポトーシス細胞死と、細胞内からのカルシウム放出を引き起こすことが考えられる。