Neurochemical Reserch 38, 1921-1934

Effect of HDAC Inhibitors on Neuroprotection and Neurite Outgrowth in Primary Rat Cortical Neurons Following Ischemic Insult.

虚血性発作後のラット神経細胞における神経保護と神経突起伸展に対するHDAC抑制剤の効果

Mohammad Rakibul HAsan,. et al.

HDAC抑制剤であるバルプロ酸(VPA)とトリコスタチンA(TSA)は、ニューロン新生、神経突起の伸展、シナプス可塑性、神経保護作用を促進する。この研究で著者らは、ラット大脳皮質神経細胞でVPAとTSAが虚血後の神経保護作用と神経細胞の回復を促進するかどうかを調べた。DIV6の神経細胞を、脱酸素・脱グルコースの環境に90min暴露した。暴露後、通常の環境に細胞を戻しVPA,TSAをそれぞれ添加し、1日後、3日後、7日後に固定してAxiovisionプログラムを用い神経突起長さの計測、Tunel染色を行った。その結果、VPAとTSAを添加した細胞は神経突起の伸展と虚血後における神経細胞死が回復した。さらに、著者らはアセチルヒストンH3、PSD95、GAP43、synaptophysinのタンパク質発現量を調べ、4つのタンパク質が無処理の細胞に比べ有意に増加していることが分った。また、虚血後のHDAC抑制剤の添加した細胞では有意にBDNFの発現量が増えていたこたから、HDAC抑制剤によるBDNFの過発現は虚血後の神経保護や神経細胞の回復を促進しているのではないかと考えられる。以上より、虚血後再酸素負荷の間におけるVPAとTSAの添加は、BDNFの発現と活性の増加を介し、虚血後の神経保護作用と神経細胞の回復を助ける作用を持つのではないかと示唆された。