Y. Wang,et al.,  Girdin Is an Intrinsic Regulator of Neuroblast Chain Migration in the Rostral Migratory Stream of the Postnatal Brain, J Neurosci. 31: 8109-8122 (2011)

 

生後脳において側脳室下帯(SVZ)は嗅球の介在ニューロンを産生している。SVZで生まれた新生ニューロンは吻側移動経路(RMS)を通り嗅球へ向かうが、この移動は細胞同士が互いを足場にして移動する鎖状移動という移動様式をとっている。しかし、この移動における細胞内メカニズムは殆ど分かっていない。今回筆者らはアクチン結合蛋白質であるガーディンをノックアウトしたマウスを用いて細胞移動を調べた。ガーディンはAkt/PKB によりリン酸化され、癌細胞の浸潤や転移に働いている蛋白質として発見された。N末端にDISC1結合領域を持ち、この複合体が海馬歯状回の生後発生や成体神経新生における細胞移動に重要な働きを担っていることが分かっている。

ガーディンKOマウスではRMSにおける細胞移動に異常がみられ、その到達部位である嗅球の成長異常が見られた。またガーディンは新生ニューロンの接着結合帯の接着部位に見られることから、細胞接着に関わっている可能性が示唆された。しかし、リン酸化サイトに変異を加えたノックインマウスでは細胞移動や嗅球の形態に異常は見られなかったことから、Akt によるガーディンのリン酸化は少なくとも神経系では明らかな形態学的異常に結びつかないことが明らかとなった。