T. Mori, et al.,  Differential responses of endogenous adult mouse neural precursors to excess neuronal excitation, Eur J Neurosci. 36:3184-93 (2012)

海馬歯状回顆粒細胞層(SGZ)での成体ニューロン新生は痙攣誘発剤による短時間のてんかん発作時の過剰または穏やかなニューロンの興奮によって増加する。発作後のニューロン新生を調べている研究の殆どはSGZに着目しているため、側脳室下帯(SVZ)で必要なニューロン興奮の閾値は分かっていない。今回著者らはマウスに、痙攣誘発剤、ペンチレンテトラゾール(PTZ, GABA-A受容体アンタゴニスト)単回投与により、(一般的なキンドリング誘発てんかん発作に比べ)短時間の発作を起こし、SVZの前駆細胞の反応を調べた。前駆細胞の細胞周期の観察はチミジンのアナログを用いた。

その結果、短時間の発作はSVZにおいて直後に細胞周期の遅延をもたらすことが明らかになった。しかしながら、SGZでは同様の効果は見られなかった。SVZでの、この発作直後の細胞周期の遅延は一回目の分裂後、再び細胞周期に入る数が増えているために引き起こされていたが、細胞周期の遅延や前駆細胞数の増加は一過性のものであった。またこの効果は一回目の細胞周期後、通常に戻った。発作2日以上経過したマウスのSVZや嗅球での前駆細胞の数は変わらなかった。これらの効果は電気痙攣による発作でも引き起こされたため、これらは短時間の発作による一般的な反応だといえる(新生ニューロンにおけるGABAーA受容体の作用でない)。

これらの結果からSVZでのニューロン新生はSGZでのそれに比べ、より厳密に制御されていることが明らかとなった。