Masayuki Sakamoto, et al., "Continuous neurogenesis in the adult forebrain is required for innate olfactory responses" Proc Natl Acad Sci U S A. 17: 8479-84 (2011)

 

海馬における成体新生ニューロンの学習や記憶に関する役割は解っているが、嗅球での成体新生ニューロンの役割に関する研究は余りなされていない。放射線や有糸分裂阻害剤を用いた研究はなされているが、それらの方法では行動実験において副作用が生じてしまう。

本研究ではそれを克服するために、遺伝子改変により成体脳新生ニューロンを選択的に除去するマウスを作製し実験を行った。その結果、持続的なニューロン新生が主嗅球だけではなく、副嗅球においても起きていることが分かった。

また、このマウスでは嗅覚や嗅球記憶においては正常であったが、天敵臭と報酬を同時に与えた時、忌避反応を示さず報酬に近づいた。更に、雄マウスでは侵入者に対する攻撃反応と、雌マウスに対する性行動が減少した。一方、雌マウスにおいても、妊娠能力が低下し、子育て行動が見られなくなった。

以上の結果から、成体マウスの持続的なニューロン新生は嗅覚依存的な 先天的行動に必要であることが明らかとなった。