Neuron (2012), 74, 277-284.

“Regulation of Presynaptic Neurotransmission by Macroautophagy”

Hernandez D, Torres CA, Setlik W, Cebri?n C, Mosharov EV, Tang G, Cheng HC, Kholodilov N, Yarygina O, Burke RE, Gershon M, Sulzer D.

 

要旨

mTORは細胞の成長、生存、タンパク質合成依存的な神経可塑性、オルガネラやタンパク質の分解を司るタンパク質である。mTORが不活性化するとマクロオートファジーによりオートファゴソームと呼ばれる小胞にタンパク質やオルガネラが取り込まれ、リソソームによって分解される。また、mTORは神経可塑性も制御しており、マクロオートファジーが機能しないと神経変性が起こる。今までは、神経細胞でのオートファジー研究では、主に細胞内の不要なタンパク質やオルガネラの除去と神経細胞のメンテナンスに関してのものが多く、オートファジーとプレシナプス機能の関係性はほとんど研究されて来なかった。本研究では、mTOR阻害剤であるラパマイシンがオートファゴソームの形成を促進(つまりmTOR阻害によりオートファジー活性化)し、それと同時にプレシナプスの大きさや、シナプス小胞の数、ドパミン放出の減少を引き起こすことが明らかとなった。また、オートファジー不全トランスジェニックマウス(ドパミン作動性神経特異的)では、ドパミン分泌と再取り込みが促進された。しかし、このトランスジェニックマウスでは、野生型で見られたようなラパマイシンによる線条体でのドパミン放出の減少を起こさなかった。以上のことから、プレシナプスにおけるmTOR-オートファジーの制御は、プレシナプスの特性(構造や神経伝達物質の放出など)を変化させるものであることが示唆された。