“Mapping of Drebrin Binding Site on F-Actin”
(アクチン線維上におけるドレブリン結合部位の位置を決める)
Grintsevich EE, Galkin VE, Orlova A, Ytterberg AJ, Mikati MM, Kudryashov DS, Loo JA, Egelman EH, Reisler E.
J. Mol. Biol. 398, 542-554, (2010)

ドレブリンは樹状突起のアクチン細胞骨格系に含まれるアクチン線維に結合するタンパク質である。これまでに細胞を用いた研究から、全長のタンパク質と同様な細胞骨格の再構成を引き起こすドレブリンのアクチン結合ドメインが同定された。本研究では、部位特異的な変異誘発実験や電子顕微鏡による再構成、化学的な架橋結合と質量分析法(Mass spectrometry)により、ドレブリンのアクチン結合ドメインがアクチン線維上に結合する上での接触点の位置を決定しようとした。(架橋結合を誘導する)2イミノチオラン(トラウト試薬)やMTS1を組み合わせて用いることで、ドレブリンのアクチン結合ドメインは同時に二か所の近接したアクチンのプロトマーに結合することができることが明らかとなった。また、化学的な架橋結合を組み合わせた部位特異的な変異誘発実験は、ドレブリンのアクチン結合ドメインの238番目のアミノ酸がアクチンのプロトマー1の374番目のシステインから5.4オングストローム以内の位置に存在すること、ドレブリンの308番目のシステインが、アクチンのプロトマー2の374番目のシステインの近くに存在することを示した。さらに質量分析法により、長さのない架橋剤である1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドが、アクチン上の99番目のグルタミンと(或いは)100番目のグルタミンに、組み換えドレブリンアクチン結合ドメインのN末端側に伸びたGSとを結び付けることができるようであった。長さの異なる架橋剤(5.4 〜 19Å)によってドレブリンの238、248、252、270番目のアミノ酸をアクチンの51番目のアミノ酸に架橋結合させることもできるようであった。以上の結果から考えると、ドレブリンのアクチン結合ドメインの中心領域はアクチンの2番目のサブドメインの中心にあり、ドレブリンのアクチン結合ドメインがFアクチンと結合するために、折りたたまれた立体構造をとっているのかもしれない。電子顕微鏡で得られた画像を再構成したところ、架橋結合した結果とよく一致して、Fドレブリンのアクチン結合ドメインのアクチンへの結合の仕方は多様であることが明らかとなり、二つの結合部位が存在することを示唆された。これらの結果は、これまでに観察されてきたドレブリンと他のFアクチン結合タンパク質との間の競合に対して、新たに構造的に理解する上で役立つと考えられる。