JUNE 30th

アクチン線維のスパイン内における構築が樹状突起スパインの構造と可塑性を制御する

The subspine organization of actin fibers regulates the structure and plasticity of dendritic spines.

Honkura N, Matsuzaki M, Noguchi J, Ellis-Davies GCR, Kasai H. (Neuron 2008 Mar 13; 57: 719-729.)                                

シナプスの機能と可塑性は、アクチン細胞骨格によって決定づけられる樹状突起スパインの生理的な構造に依存している。アクチン線維はスパイン内の主要な細胞骨格であり、その構築については電子顕微鏡を用いて解析されてきたものの、生きている標本では理解がなかなか進んでいなかった。

この論文で著者らはラット海馬スライスを用いてCA1野の錐体細胞の各スパイン内におけるアクチン線維の構築を解析した。2光子顕微鏡を用いて(レーザー照射によって可視化される)GFP(PA-GFP)を融合したβアクチンタンパク質の蛍光を活性化したところ、まず、定常状態では2種類のプールが存在することが明らかとなった。スパインの先端にあるアクチン線維の”動的なプール(dynamic pool)”は基部方向に移動したことなどから、トレッドミルによるものだと考えられた。スライス標本ではラトランクリンAの投与によりスパインが急激に矮小化したことなどから、このプールはスパインの拡張性の力を生み出すのに必要だと考えられる。また、スパインの基部には”安定なプール(stable pool)”が存在し、その大きさはスパインの大きさに依存していることが明らかとなった。さらに2光子顕微鏡によるケージドグルタメートの反復的な活性化によりスパインの大きさが増加すると共に第3のプール”拡張性のプール(enlargement pool)”が出現した。このプールは、しばしば樹状突起の幹部へと移行したが、スパインの肥大化が長期間持続するには、これはスパインの頸部により封じ込められなければならなかった。そして、この封じ込めはCaMKIIにより正に制御されていることも明らかになった。

以上のことからスパインは3種類のアクチン線維によって制御される精巧な機械的な性質を持つことが明らかとなった。(担当者: KH)

キーワード:スパイン、アクチン、

実験技術:2光子顕微鏡、ケージドグルタメート、光活性化法(photoactivation)