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ドレブリン

ドレブリンの概説

ドレブリン発見の歴史

ドレブリンは、脳の発達に伴って一過性に出現してくるタンパク質として、1985年に我々が独自に発見したアクチン結合タンパク質です。その発見の歴史は初期の論文リストをご覧ください。

神経細胞の発達とドレブリン

その後の研究によりドレブリンは神経細胞の発達(成長円錐の形成、突起成長)にとって重要な役割を果たしているタンパク質であることがわかりました。

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シナプス成熟とドレブリン

神経細胞のさらなる発達に伴い、ドレブリンの幼弱型アイソフォームであるドレブリンEの発現は減少し、かわって成熟型の神経特異的アイソフォームのドレブリンAが発現してきます。このドレブリンAの発現は樹状突起スパイン形成を促進します。

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成熟神経細胞においては、ドレブリンの神経特異的アイソフォームであるドレブリンAが樹状突起スパインに特異的に局在します。興味深いことに、このスパインへの局在は神経活動依存的に変化し、シナプス可塑性にともない一過性に樹状突起スパインから樹状突起シャフトへ移動することがわかっています。後で述べますが、ドレブリンの結合したアクチン線維は安定化していると考えられるため、この一過性の移動はスパインが形態的変化を起こすために重要な役割をしていると思われます。

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ドレブリンはスパインの形態的可塑性にくわえて、NMDA受容体の恒常性維持可塑性などにも重要な役割を果たしていることもわかってきまた。

認知障害(アルツハイマー病など)とドレブリン

我々は1996年に、アルツハイマー病などの痴呆性疾患では樹状突起スパインのドレブリンが広範囲に消失していることを報告しました。ドレブリンの持続的消失はシナプス機能不全を引き起こしていることを推測させますが、この結果は他の研究者達により、患者死後脳、動物モデル、培養神経細胞などを使って確認されました。さらには、定量的な解析からもドレブリンの集積量と認知能力との相関が認められました。dimentia3

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 ドレブリンの遺伝学的・生化学的解析(遺伝子発現、分子構造、およびアクチン線維に対する影響等)

 ドレブリンはN末端にADF-ホモロジードメインを持つ分子で、コフィリンやツインフィリンとスーパーファミリーを作っていると考えることができます。ドレブリンは大きく分けると、成熟型(ドレブリンA:このアイソフォームは神経細胞特異的です)と幼弱型(ドレブリンE)の二種類に分かれます。ドレブリンが結合するタンパク質としては種々のものが報告されていますが、一番の特徴はアクチン線維に結合して、アクチン線維の構造を変化させることです。詳しくはドレブリンの遺伝学的・生化学的解析の論文リストをご覧ください。

ドレブリンを応用した神経細胞の成熟度の測定法

成熟した興奮性シナプスにはドレブリンがシナプス後部(樹状突起スパイン)に集積ていますが、このドレブリンの集積が神経活動依存的に一過性に樹状突起シャフトに移動することがシナプス可塑性にとって重要であることが示唆されています。事実、アルツハイマー病にみられるとおり、シナプスにドレブリンが集積していないと痴呆症が起こるようです。そこで、私たちはドレブリンの集積したシナプス密度をを定量的に測定するこにより、神経細胞の成熟度やシナプス機能を推定し(DIBES法:Drebrin-imaging-based evaluation of synapses)、アミロイドβオリゴマーのシナプス毒性やその毒性の阻害剤を見つけることに成功しました。現在、この方法をヒトiPS細胞由来分化神経細胞やげっ歯類の初代培養海馬神経細胞に応用して、種々の化合物のシナプス毒性あるいはシナプス形成促進活性等を調べる研究を開始しています。プロトコールは公開していますので、興味のある方はご連絡ください。

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ドレブリン抗体について

  • ドレブリン染色を利用した最近の論文リストはこちらをご覧ください。

  • 坑ドレブリンモノクローナル抗体(M2F6)はMBL株式会社医学生物学研究所から購入できます。電話番号は052-238-1904です。
  • 坑ドレブリンA特異的抗血清(DAS2)はIBL免疫生物学研究所から購入できます。電話番号は0274-50-8666です。
  • 坑ドレブリン抗血清、抗リン酸化ドレブリン抗血清、種々のモノクローナル抗体が必要な方は白尾までご連絡ください
  • 最 近、「非神経細胞がドレブリン抗体で染まった、おかしいではないか」という質問をよく受けますが、神経特異的と考えられているのはドレブリンの神経特異的 アイソフォームのドレブリンAだけです。ドレブリンEは発生の早い段階では非神経細胞にも多量発現していることがあります。たいていの培養系の非神経細胞で は(神経細胞に比較して)少量のドレブリンEが発現しています。L細胞はドレブリンを全く発現していない珍しい細胞です。

ドレブリンに関する主な総説

  • Shirao T, Gonzalez-Billault C. “Actin filaments and microtubules in dendritic spines.” J Neurochem. 126: 155-164 (2013)
  • Cingolani LA, Goda Y. “Actin in action: the interplay between the actin cytoskeleton and synaptic efficacy.“Nat Rev Neurosci. 2008 May;9(5):344-56.
  • Sekino Y, Kojima N, Shirao T. “Role of actin cytoskeleton in dendritic spine morphogenesis” Neurochem. Int. 51: 92-104 (2007)  この総説はドレブリンの説明としてしばしば引用される総説です。
  • Kojima, N., Shirao, T. “Synaptic dysfunction and disruption of the postsynaptic drebrin-actin complex: the study of neurological disorders accompanied by cognitive deficits.” Neurosci. Res. 58:1-5 (2007)
    Majoul, I., Shirao, T., Sekino, Y., Duden, R. “Many faces of Drebrin: from building dendritic spines and stabilizing gap junctions to shaping neurite-like cell processes” Histochem. Cell Biol. 127:355-361 (2007)
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    ドレブリンに関する日本語の総説

    • 児島伸彦、白尾智明
      「神経疾患とドレブリン」 Clinical Neuroscience1 24: 1392-1393 (2006)
    • 関野祐子, 白尾智明
      「興奮性シナプスのアクチン結合タンパク-その動態と機能-」 蛋白質・核酸・酵素 51:350-356(2006)
    • 関野祐子、高橋秀人、白尾智明
      「スパインアクチン細胞骨格は興奮生シナプス成熟を制御する」蛋白質・核酸・酵素49:270-275(2004)
    • 白尾智明、関野祐子、高橋秀人
      「蛋白レベルから見た神経シナプスの発達と異常」日本精神神経薬理学雑誌 24:247-256(2004)

     

     

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