脳科学を超えた新しい学問分野を創設する

2. 成熟シナプス可塑性における細胞骨格の役割

シナプス可塑性に付随して起こるアクチン細胞骨格の変化

バンカー法による初代海馬神経細胞培養系は低密度で培養できるため、神経細胞の微小構造である樹状突起スパインを直接観察することができる優れた実験系である。我々はこの系を用いて、シナプス可塑性に付随して起こるスパインの構造的可塑性をアクチン細胞骨格の変化に着目して解析し、ドレブリンを含む安定アクチン (F-actin & drebrin) と含まない動的アクチン (F-actin & cofilin) とのバランス調節機構がシナプス可塑性の基盤として重要であることを明らかにした (Mizui et al., 2014)。また、タイムラプスイメージングやFRAP (光退色後蛍光回復法) を用いて、その分子メカニズムの解明を進めている。さらに、従来の光学顕微鏡の分解能の限界(200 nm)を大きく上回る超解像顕微鏡(分解能: 20 nm)を用いることにより、樹状突起スパイン内部におけるドレブリンを始めとするポストシナプスタンパク質のより詳細な性質を明らかにしようとしている。
STORM

 

重粒子線およびX線照射による一過性のシナプス細胞骨格変化と高次脳機能への影響

生体に放射線照射後、神経細胞のシナプス機能不全が引き起こされるために脳機能の障害が引き起こされていることが、行動解析および免疫組織染色により明らかになりつつある。その分子基盤を解明するために、培養神経細胞(in vitro)および動物(in vivo)を用いた放射線暴露実験を開始している。加えて、X線照射と重粒子線照射の効果の違いを比較するため、重粒子線を用いた実験も進めている。

文科省 科研費

小金澤紀子 若手(B) 「放射線障害による記憶障害とその保護:シナプスタンパク質局在変化に着目した解析」

ドレブリンのシナプス可塑性における役割

ドレブリンの完全ノックアウトマウス (DXKO) およびアイソフォーム変換機構欠損マウスA (DAKO) を作成し、ドレブリンのシナプス可塑性における役割解明を行っている。学習行動、シナプス可塑性への影響を調べたところ、DAKOマウスでは目立った脳の形態異常はなかったが、恐怖条件づけ記憶の障害と海馬シナプス可塑性の障害がみられた。現在その異常に関わる分子メカニズムを研究中である。さらに、DXKOマウスでは神経細胞移動と嗅覚に異常が起きていることが示唆されている。

文科省 科研費

小金澤紀子 若手(B) 「超解像によるNMDA受容体サブユニット局在調整機構解析」

 

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